東京地方裁判所 平成5年(刑わ)1450号 判決 1994年1月25日
本籍
東京都新宿区西早稲田二丁目一三番
住居
東京都新宿区西早稲田二丁目一三番八号
会社役員
小松哲雄
昭和二二年七月一日生
右の者に対する常習賭博、所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官富松茂大、加藤裕、弁護人土屋東一(主任)、加藤昌、高須順一各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金五八〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
警視庁渋谷警察署で保管中の賭博機械一五台(平成五年東地庁外領第三八五五号の2ないし16)、現金合計二六一万九〇〇〇円(同号の27ないし29、38、40、42)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、
第一 東京都新宿区西早稲田二丁目一三番八号に居住し、昭和六二年一一月から平成三年七月まで、同都渋谷区円山町五番一六号ほか四か所において、いわゆるポーカーゲーム店を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、右各店の経営者が自己ではなく各店の従業員であるかのように装い、かつ、その収支を明らかにする帳簿を作成せず、売上金を借名の預金口座に入金するなどしてその所得を秘匿した上、
一 昭和六三年分の実際総所得金額が二六九九万四四九九円(別紙1修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、右所得税の納付期限である平成元年三月一五日までに、同都新宿区北新宿一丁目一九番三号所轄新宿区税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって不正の行為により、昭和六三年分の所得税額八九七万五〇〇〇円(別紙2ほ脱税額計算書参照)を免れた
二 平成元年分の実際総所得金額が一億一五〇二万〇八六二円(別紙3修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、右所得税の納付期限である平成二年三月一五日までに、前記新宿区税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって不正の行為により、平成元年分の所得税額五二九八万三五〇〇円(別紙4ほ脱税額計算書参照)を免れた
三 平成二年分の実際総所得金額が三億二四一七万七四四一円(別紙5修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、右所得税の納付期限である平成三年三月一五日までに、前記新宿区税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって不正の行為により、平成二年分の所得税額一億五七四六万八五〇〇円(別紙6ほ脱税額計算書参照)を免れた
第二 小村日出男と共謀の上、常習として、平成四年八月二〇日ころから平成五年六月二四日までの間、ポーカーと称する遊技機一五台を設置した同都渋谷区円山町五番三号萩原ビル地下一階ゲーム機設置店「ビックゴジラ」店内において、右遊技機を使用して、賭客の桑原通仁らを相手方として、金銭を賭け、画面に現れる絵柄の組合せなどによって得点を決めて勝負を争う方法の賭博をした
ものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
判示第一の各事実について
一 被告人の検察官に対する平成五年九月一二日付け、同月一五日付、同月一八日付け、同月一九日付け、同月二二日付け(二通)及び同月二三日付け各供述調書
一 樋口順三、藤岡仲雄及び小松志津子の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の現金調査書、普通預金調査書、定期預金調査書、有価証券調査書、土地・建物調査書、建物付属設備調査書、器具備品調査書、車両運搬具調査書、保証金調査書、事業主貸調査書、借入金調査書、未払金調査書、事業主借調査書、小松志津子勘定調査書、社会保険料控除調査書、生命保険料控除調査書、損害保険料控除調査書、扶養控除調査書及び基礎控除調査書
一 検察事務官作成の捜査報告書四通(事業主貸勘定、小松志津子勘定、元入金及び税務署の所在地に関するもの)
判示第一の一及び二の各事実について
一 検察事務官作成の捜査報告書(車両運搬具に関するもの)
判示第一の一の事実について
一 大蔵事務官作成の一時所得の特別控除額調査書、一時所得の1/2課税控除額調査書及び一時所得調査書
一 検察事務官作成の捜査報告書三通(普通預金、未払金及び一時所得勘定に関するもの)
判示第一の二及び三の各事実について
一 大蔵事務官作成の前払金調査書、貸付金調査書、預け金調査書、総合短期譲渡所得調査書及び譲渡所得との損益通算金額調査書
判示第一の二の事実について
一 検察事務官作成の捜査報告書二通(総合短期譲渡所得及び譲渡所得との損益通算金額に関するもの)
判示第一の三の事実について
一 佐賀信哉の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成のゴルフ会員権調査書及び電話加入権調査書
判示第二の事実について
一 第一回公判調書中の被告人供述部分
一 被告人の検察官(同年七月一五日付け、同月二〇日付け)及び司法警察員(三通)に対する各供述調書
一 第一回公判調書中の分離前共同被告人小村日出男の供述部分
一 分離前共同被告人小村日出男の検察官(二通)及び司法警察員(三通)に対する各供述調書
一 藤浦貢の検察官(二通)及び司法警察員に対する各供述調書
一 藤原由貴則、齋藤大記、玉城義治及び佐賀信哉(二通)の検察官に各供述調書謄本
一 桑原通仁、佐藤守、高橋ルミ子、阿比留正寿、江藤明、斉藤寿一、藤原由貴則(二通)、玉城義治、佐賀信哉(二通)、樋口宏治、近藤光昭及び坂本斉彦の司法警察員に対する各供述調書謄本
一 司法検察員作成の現行犯人逮捕手続書謄本、写真撮影報告書謄本、捜索差押調書及び賭博機械見分報告書謄本
一 検察事務官作成の押収物(証拠品)保管証明書
(法令の適用)
罰条
判示第一の各所為について いずれも所得税法二三八条一項(ただし、罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)、二項(情状による)
判示第二の所為について 刑法六〇条、一八六条一項
刑種の選択
判示第一の各罪について いずれも懲役刑と罰金刑を併科
併合罪の処理 刑法四五条前段
懲役刑について 刑法四七条本文、一〇条(刑及び犯情の最も重い判示第一の三の罪の刑に加重)
罰金刑について 刑法四八条二項(判示第一の各罪の罰金額を合算)
労役場留置 刑法一八条
刑の執行猶予
懲役刑について 刑法二五条一項
没収 刑法一九条一項二号、三号、二項本文
よって、主文のとおり判決する。
(求刑 懲役三年及び罰金七〇〇〇万円、没収)
(裁判官 中里智美)
別紙1 修正貸借対照表
(所得金額総括表)
<省略>
修正貸借対照表
<省略>
別紙2 ほ脱税額計算書
<省略>
別紙3 修正貸借対照表
(所得金額総括表)
<省略>
修正貸借対照表
<省略>
別紙4 ほ脱税額計算書
<省略>
別紙5 修正貸借対照表
(所得金額総括表)
<省略>
修正貸借対照表
<省略>
別紙6 ほ脱税額計算書
<省略>